西町北21丁目/a>

西町北21丁目

まともな事を書きます

ロシアの子は手がかかる

レンズを買いました。

いや、正確には買ってました

 

f:id:Ni4mc:20210201133827j:plain

LZOS jupiter-9 85mm F2、初めてのオールドレンズです。シルバーの外装がかっこいいね。

 

長めの画角が好きなので80~90mmぐらいの単焦点が欲しいと前々から思っていたのですが、横浜の大貫カメラで2万ぐらいで売っているjupiterがあったので買っちゃいました。安かったのはニッケルメッキと思しきメッキがほとんど剥がれている事とヘリコイドグリスが劣化してヘリコイドがやたら固いのが原因だと思います。

買ったのが11月なんですが、「ブログにはある程度写真撮ったら書くか」って思ってました。まあこのご時世なもんで写真を撮りに出かけることも無く、気づけばそろそろ購入から3ヶ月です。と言うことで重い腰を上げてブログを書いている次第です。

 

ロシアレンズCarl Zeissの血を引いているものが大多数ですが、こちらも例に漏れずCarl Zeissの系譜。元となったのはzeiss ikonのSonnar8.5cm F2で、戦後にソ連が少し設計を変更したのがこのjupiterになります。

現代のツァイスレンズは何かと高いですが、こちらはツァイス税非課税。ツァイスの血を引くレンズが2万とかそこらで買えるんだからすごいですよね。

 

f:id:Ni4mc:20210201155502j:plain

お名前の「jupiter」はキリル文字にすると「ЮПИТЕР」、ユピテルと読みます。レーダー探知機ではない。英字表記から分かるように、「木星」の意味を持つレンズです。

シリアル番号の頭とロゴで製造年と製造した工場が簡単に分かるそうで、このレンズはシリアル番号が66から始まるので1966年製、ロゴからモスクワのリトカリノ光学硝子工場製であることが分かります。50年も前のレンズなんですねこれ。

 

f:id:Ni4mc:20210201155713j:plain

jupiterはプリセット絞りという今では聞き慣れない方式の絞りですが、これは上のリングで最も絞り込んだときの値を設定して、撮影時に下のリングを回して設定した絞りへ絞り込むという方式。初見だとちょっと混乱します。まあデジタル機で撮る場合はSSやISO感度が開放からどれだけ落ちたかでF値が分かるので上のリングはほぼ使いません。

 

f:id:Ni4mc:20210201155550j:plain

プリセット絞りの恩恵として得られたのが、15枚もの絞り羽を使った絞りです。完全な円形絞りではありませんが、たくさんの絞り羽が見えるレンズ前面の景色はいつ見ても素敵。

 

 

f:id:Ni4mc:20210201155753j:plain

さて、このレンズですが、M39マウントにM39-M42の変換リングを噛ませてM42マウント仕様になっています。

この仕様が曲者で、まずM39-M42マウントの変換リングはただのネジが切られたうっすいリングであるにも関わらず、なんと裏表の概念があります。リングに切り欠きがある場合は切り欠きの「ある」方がカメラ側、「ない」方がレンズ側を向くように付けるのが正しいです。この裏表を間違えるとM42-各マウントのマウントアダプターにリングがハマって取れなくなったりします。切り欠きが無いのも売ってたりするので、その時は裏表が分かるようヤスリで少し削るなどして目印を付けておくと良いです。ちなみに画像のリングは切り欠きが付いてなかったので削って目印を付けています。

これはM42マウントの内径がカメラ側へ向かうにつれて少し小さくなっていることに起因するそうで、そのせいで裏表を間違えると内径がすぼまっているところに太い径のネジをねじ込むことになってしまいますので、当然取れなくなります。

 

購入時はリングが裏表逆に付いていたようで、裏表があるなんて事を全く知らずに初装着でリングとマウントアダプター1組をダメにしました。5000円弱をドブに捨てた瞬間である。ちなみに元々付いてたリングは切り欠き付きのやつでした。上記のツイートは切り欠きがレンズ側を向いてますよね。こうしてはいけません。

 

このような事案は奥の内径を小さくしているちゃんとした作りのマウントアダプターで発生するものだそうで、中華アダプターを始めとした全体を同じ内径でねじ切っている適当な作りのアダプターでは発生しないそうな。安物買いの銭失いより酷い仕打ちである。

 

仕方なく新しいマウントアダプターとリングを買いましたが、それだけでは終わりません。

 

実はM39マウントとM42マウントはフランジバックの長さがほんの僅かに違います。M39マウントのほうがコンマ単位でフランジバックが長いので、M42マウントで使うと無限遠が出ません。これは困った。

f:id:Ni4mc:20201112174122j:plain

このカットもピントリングを無限遠側へめいっぱい回しているにも関わらず、むっちゃ手前にピントが来ています。これではとても使えるものではありません。

どうやらミラーレス用のアダプターはこういったことも考慮して少し長さを詰めて作られていたり、アダプター側で調整したりできるらしいですが、M42-Kマウントはただのリングです。そんな素敵な機能はありません。

 

ということで分解して無限遠が出るように改造します。

ロシアレンズは作りがガバガバなので、jupiterの場合、絞りリングとピントリングを掴んで回すといとも容易く光学系とヘリコイドが分離します。

光学系とヘリコイドに分離すると、光学系に薄いリングが嵌っていることが分かります。どうやらこれで光路長を調整しているようです。このリングの厚みは2mmで、いろいろいじくり回していると0.5mm詰めると無限遠が出ることが分かりました。

f:id:Ni4mc:20210201155410j:plain

f:id:Ni4mc:20210201155350j:plain
そこで用意したのが1.5mm径の針金です。100均に売ってました。針金をいい感じの長さに切ってスペーサーの嵌っていたところに針金を巻きつけ、ヘリコイドと合体させれば完成です。一応実写で確認して、これで無限遠が出るようになりました。

 

ということで、紆余曲折の末、jupiterがちゃんと使えるようになりました。激固のヘリコイドもずっといじってたら比較的柔らかくなりましたし、これで実用には何も問題ありません。

 

 

ということで作例のお時間。

f:id:Ni4mc:20210201155250j:plain
今のところjupiterを持ち出して写真を撮ったのは1回だけなんですが、まあ良い写りをしますね。ロシアレンズ沼に落ちる人がいるのも納得です。

 

f:id:Ni4mc:20210201155205j:plain

f:id:Ni4mc:20210201155219j:plain
開放だと流石に甘い感じもしますがそれよりもボケですよ、ボケ質がすごい。トロットロ。

ですが木の枝なんかが背景になるとちょっと二線ボケが目に付きますね。

f:id:Ni4mc:20210201155305j:plain

50年以上前のレンズなので逆光耐性はそれ相応です。このフレアを使いこなせてようやく一人前のオールドレンズ使いになれるんだと思う。

f:id:Ni4mc:20210201155233j:plain

あとロシアレンズの共通項としてよく話題に上がりますが、白い色の表現が良いですね。

 

1晩と1日のツーリングで1回持ち出しただけなので写真はこれっきりなんですが、これからが楽しみですね。流石にこれでは作例が少なすぎるので写真が増えたら追加したいと思います。

 

2021/5/14追記:桜を撮りました。

ni4mc.hatenablog.com