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西町北21丁目

まともな事を書きます

Kとのお別れ

 皆様に大切なお知らせがございます。

 

 11月某日、6年間お付き合いしてきたあの子と別れました。

 

そうです。

 この子です。2017年の6月、高校へ入学したばかりでまだまだ初々しかったであろう幼気な俺を愉快で楽しい、それでいてどこまでも深く底のない恐ろしき写真ワールドへと誘った張本人(人?)、またの名を『PENTAX K-70 (S/N:7316316)』とも言います。

2017年6月 一眼を手にしてから数週間もしないうちに地下へ赴く当時の俺の野心は相当ではないだろうか。

2017年7月 時には露出をミスって九段下駅を爆発させることも

2017年8月 ちょっとお写真が分かってきたかな?

2017年11月 当時の腕を考えればこの一枚はかなりいい感じ

 お写真スーパー下手くそ高校生だったあの頃から6年の時を経て、随分と写真の腕も上達しました。思えば遠くまで来たものです。今になってからK-70を手にしたばかりの頃に撮った写真を見返したらあまりの下手くそさに恥ずかしくて目を背けてしまいそうですが、そんな頃から写真のいろはどころか、いつしかそれを通り越して「つねならむ」の辺りまでいつの間にか教えて貰ってしまっていました。

 
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 新幹線が跳ねたスプリンクラーの水をぶっかけられたり、防塵防滴をいいことに雪の上に置いたりもしてきました。大事に手厚くといった使い方は全くしていなかったにも関わらず、よく6年間も無事でいてくれたものです。故障らしい故障と言えばバッテリーストッパーの爪が折れて交換のために一度工場送りにしたぐらいです。

 

2018年2月 この頃からRAW現像をするようになる

2019年5月 構図の組み方も現像の仕方も板についてきた

 ペンタックスは数あるカメラメーカーの中でも特に不遇のポジションで有名です。AFが弱い、レンズが少ない、サードパーティーからも見放される、使ってる人間がいない、変態の代名詞のようにされる等々、CanonNikonの優遇のされように比べて、ペンタックスやめて他社に移行しようかな…と思った事は数えられないほどあります。

2020年7月

2020年12月

 それでもこのK-70にしがみついてきたのは何を隠そう、金が無いからです。カメラってやっぱり高いですよね。マウント乗り換えとなると、やはり10万円は下りません。常時金欠、貯金口座が火の車のオタクがそんな金額を用意するのはそう簡単ではありません。それならばKマウントのレンズに金をかけてもっと良いものにしようとしてきた結果、辿り着いたのが標準ズームにシグマの18-35mm F1.8、望遠ズームにDA★60-250mmF4、超広角にSAMYANGの10mmF2.8という三種の神器に辿り着きました。換算15mmから400mmまでそれなりの明るさで、なおかつ荷物が大掛かりになりすぎない素敵な構成です。今でもこの組み合わせはAPS-Cの理想形だと思っているほどです。

 三種の神器が揃ってからはしばらくKマウントへの投資も落ち着きましたが、Kマウントへのお別れは突然やってきました。

 K-70が『黒死病』を患ってしまったためです。

2021年11月

2022年3月

2022年7月

 ペンタックスのエントリー機は代々、伝統的にこの『黒死病』という持病を抱えています。これは絞りを制御しているソレノイドが経年によって磁化して動きが渋くなり、絞りの制御が上手くできなくなってしまう症状です。F1.8までカメラは絞りを開けたつもりでも、絞りがF16ぐらいまでしか開いていなければ、出てくる画は真っ黒の何が写っているかも全く分からない画になってしまいます。「カメラが“黒”い写真しか撮れなくなって“死”んでしまう“病”気」ということで、この症状は誰が呼んだか『黒死病』と呼ばれるようになりました。その黒死病の魔の手がついに我がK-70にも襲いかかってきてしまったのです。

 確かに予兆はありました。2022年の9月頃でしょうか。京都へ行った際には自動露出で撮ったはずなのに写真がやたら暗くなることが時々ありました。思い返せばあの頃からカメラは限界が近づいていて、不調を訴えていたのですね。

 もちろんカメラは機械ですから、黒死病にも治す方法はあります。が、治すにはカメラを分解しなければなりません。流石にそこまでのリスクを負う気にはなれなかったので、黒死病の病状が進行して完全に死んでしまう前に新しいカメラを買おうとようやく重い腰を上げてマウント乗り換えを決意しました。

 K-70が不調を訴える以前の完全体と言える状態で撮れた最後の被写体はリア友のバイクでした。

 

 乗り換え先の候補として考えたのはFujifilm X-E4、SIGMA fp、LUMIX S5、Nikon Z6の4つです。我ながら逆張りオタクらしいラインナップですね。

 候補に上がった機体はX-E4を除いて全てがフルサイズミラーレスです。ただ単純にフルサイズに憧れがあった、とかそういった類ではありません。では何故なのかというと、フルサイズ用レンズを本来の画角で使いたかったからです。カメラに触れるオタクの皆さんはご存知のように、フルサイズ用レンズをAPS-Cのボディで使うにはセンサーが小さい分、レンズの焦点距離に1.5を乗じた焦点距離と同じ画角になります。ペンタックス時代には「このレンズ良さそ〜〜〜」と思っても35mm判換算の画角が微妙すぎてやきもきさせられた事が多々ありました。そのような悩みから解放されるには、やはりフルサイズであることが必須です。ただし、X-E4だけはそれとは別次元の良さがあるので例外としました。

 

 そうして4機の候補まで選んだところからが難しい。なにせどれも一長一短、どれを選んでも満足できるでしょうし、逆にどれを選んでも他の候補しか持っていなかった長所へ思いを馳せる事になるでしょうから。そうして悩み続けていたところ、一つのお知らせが飛び込んできました。

 コシナからVoigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mmF2のZマウント版が登場するそうではありませんか。このAPO-LANTHAR 65mm、もともとはソニーEマウント用に生まれたレンズでしたが、フォトヨドバシがEマウント版のレビューをしていた際に掲載されていた作例がものすごくて、持ってもいないのにこのレンズにすっかり惚れてしまっていたのです。

 そんなレンズがZマウントにも登場するというのだから、今まで悩みに悩んでいたのが嘘かのように即決で新しいカメラはZ6に決定されました。あっけないですね。

 

 流石に65mmの1本だけで写真を撮るのは少し厳しいですし、その上アポランの発売日はまだまだ先です。ということでNIKOR Z 24-70mmF4とマウントアダプターFTZが付いたキットと望遠枠にApo-Sonnar T* 2/135 ZF.2を選びました。同じ135mmで大口径かつ写りの評判がいいレンズはシグマの135mm F1.8 DG HSMもありましたし、なんならシグマの方が4万円ぐらい安かったですが、FマウントのレンズはいつかフィルムFマウント機を買った時にそっちでも使えるように絞りリング付きのものにしておきたかったのでAi-P互換のアポゾナーを選択しました。

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注文しました。


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届きました。

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なんか増えました。

 

 おでかけしました。


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『…レンズがとても良いので。』

 そして遅れること1ヶ月、真打登場。これにて役者は揃いました。

 合計で約45万円です。過走行の中古車が1台ぐらい買える金額の買い物を勢いでしてしまいました。ですが、初期投資に金を注ぎ込まなければ、後々から13万のレンズを買うようなことができるほど金の使い方が上手くないことは自分が一番理解しています。せっかく清水の舞台から飛び降りるなら、もっと高い所から飛んでしまいましょう。

 

 そして、今まで6年間頑張ってくれたK-70とKマウントのレンズ達は次なるオーナーの元へ旅立ってもらおうかと思いましたが、そんな矢先、自分の役目が終わったことを悟ったかのように、ついにK-70は真っ暗な写真しか撮ってくれなくなってしまいました。

 その後、K-70をヤフオクへ「黒死病発生のためジャンク」として出品したところ、なんと26000円もの値段をつけてもらえました。まともな状態の中古が3万円台から取引されている中、ぶっ壊れている状態でここまで高く買ってもらえたのは大変ありがたいです。K-70は今、新たな持ち主の元でどのように過ごしているのでしょうか。手術を受けて完全体に戻り、元気に写真を撮っているかもしれませんし、部品取りにされて他のK-70の一部になっているかもしれませんし、そのどちらとも違った今を過ごしているかもしれません。

 

 6年間ありがとうございました。どうか達者で。

 

そして始まるZとの日々

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 さて、6年間も”あの”ペンタックスを使ってきたのですから、いざNikonの最新鋭(言うても型落ちだけど)ミラーレスを使うと、AFが速い!それでいて精度もバッチリ!ファインダーめっちゃ見やすい!レンズがよりどりみどり!しかも中古の弾数も豊富!高感度耐性すげえ!135mmF2のボケすげえ!アポランの解像力すげえ!と驚きの連続です。

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 最新鋭ミラーレスを買っておきながら、不便極まりないMFレンズでレンズラインナップの大半を固める暴挙に出たわけですが、今ではむしろMFで固めて良かったとすら感じています。というのも、MFレンズで写真を撮る際にはピントを合わせる動作をする分、シャッターを切る前に余計に時間がかかるわけです。そうするとその間の時間に「どういう写真に仕上げるのか」を考えるシンキングタイムが発生します。シンキングタイムがある分、「いい感じ」のカットを出す打率はちょっと上がりましたし、そういう意味では軽快さを捨てた選択は間違っていなかったと思っています。軽快にアレコレ撮ってもそのRAWを眠らせていたら意味がないので。

 とは言え、動き物を追うのは厳しいですし、望遠域ではなおのことです。そういった時には24-70に助けてもらうこともできますし、電車博士用にいつかは導入したいと思っている300mmぐらいのレンズは流石にAFレンズにしようと思っています。

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 Zを手にして、そしてKとお別れしてからもう4ヶ月。これからZ6とはどれほどの間のお付き合いになるでしょうか。これからのお付き合いでK-70のように”愛機”と呼べるぐらいまで仲良くなれるといいですね。