こんばんは。
今日はNewgearの話です。まあ9月ぐらいに買ったやつなんですけど。
作例溜まったら書こうかな〜と思っていたら出不精すぎて全然作例が溜まりませんでした。逆に書ききっていないNewgearが渋滞する始末。なんてこった。渋滞してるやつも追々書きます。やる気があれば。
とまあ前置きはこの辺にして、9月に我が家へやってきたのはこちら。
SIGMA DP3 Merrillです。
SIGMAのDPシリーズと言うと、カメラにちょっと詳しい方なら皆さんご存知のfoveon X3イメージセンサーを搭載したコンデジファミリーですが、その中でもDP3 Merrillは換算75mmと中望遠のレンズにMerrill世代のAPS-C判センサーを合わせた一台です。
このブログを見に来る人間みんながみんな変態カメラに詳しいカメラオタクではないのでFoveonセンサーについて解説すると、簡単に言えば『理論上は普通のカメラの3倍とか4倍ぐらいの解像力を誇る変態イメージセンサー』です。
一般的なデジタルカメラ達は数百数千万とある画素のうち、全体の1/4の画素に赤色、1/4で青色、2/4で緑色の色のカラーフィルターが感光素子の上に乗っており、この各色の画素は基本的に3色4画素からなる集合体が無数に並ぶように配列されています。これがいわゆるベイヤー配列という奴です。ベイヤー配列では1画素で1色しか明るさを感知できないので周囲にある他色の画素の色情報から「だいたいこんなもんだろ」と足りない色情報を補完しています。
即ち、実質的に生の情報量は画素数の1/3~1/4程度なわけです。しかし、このFoveonセンサーはなんと、1画素で3色全ての色情報を取得できます。
は?
ね?変態的でしょう?他のカメラが4画素で補完し合って3色の色情報を絞り出しているというのに、Foveonはそんなのお構いなしに1画素で全て完結するわけです。おかげで補完のないピュアな情報がギチギチに詰まった緻密な画を出力してくれるわけです。
理屈としてはイメージセンサーに用いられる半導体の材料でお馴染みのシリコンは光を透過できるので、その特性を用いて縦方向に画素を3つ重ねているらしいです。変態ですね。
そんな素敵な変態テクノロジーが実用化されたならば、今や全世界のカメラがFoveonセンサーになっていてもおかしくはないのですが、そうなっていないのはFoveonセンサーは現時点の技術ではとんでもないじゃじゃ馬だからです。ベイヤーセンサー機では今となってはISO3200やISO6400まで感度を上げても画像が崩壊するほどノイズは乗りませんが、じゃじゃ馬のFoveonちゃんはそうはいきません。ISO400から早くもノイジーな写真を吐き出し始め、ISO1600なんて使おうもんならもうこの世の終わりのようなノイズまみれの画が出てくるようになります。他にも細かいFoveonの弱点は多数あるのですが、とにかく特性がピーキーすぎるのです。
とは言え、低感度で撮れば圧倒的解像感を誇るとんでもない画を出力してくれるのですから、この画に魅せられ、やがてFoveon機を購入してしまうカメラオタクは少なくありません。現に俺もその一人です。
オタクの物欲には波のように「ウワー今アレめちゃくちゃ欲しい〜」という時期があるかと思いますが(あるよな?)、一期に1回ぐらいやって来るFoveon機欲しいウェーブがちょうど来ていたタイミングでヤフオクにお安いDP3が出現、さらに乗り換えた旧いスマホをヤフオクに出して1万円と少々の臨時収入を得ていたのも追い風になり、まんまと落札してしまいました。4万で落として1万はスマホ売った金で相殺したので実質3万円です。だいぶ安いんじゃないでしようか。
まあ安いものにはそれなりに理由ってものがあるのが世の常で、このDP3は何故安かったかと言うと、外装がボロボロだったから。見てくださいよこれ。
モニターの尋常でない傷!
打痕!しかもタッチアップペイントで隠してある!でも写真は普通に撮れるらしい!写真が撮れるなら問題ねえ!
あと、コマンドダイヤルも動作不良が生じているとの事でしたが、接点復活剤をコマンドダイヤルに塗りたくってグリグリ回してるとあっさり復活しました。コマンドダイヤルの接触不良はDPシリーズに先祖代々続く持病らしいですね。Merrillの後輩であるDP Quattroも相変わらずみたいですし。
ボロボロの外装は特に気にしませんし、唯一の懸念事項だったコマンドダイヤルの暴走も解決したのでこれでパーフェクトです。写真を撮りに行きましょう。
DP3がやってきた1週間後、リア友と京都に行きました。もちろん一眼やフィルム機も含めて所有機材を全て鞄に詰めて持っていきましたが、Newgearのテンションが全く抜けていないので結局ほとんどDP3で写真を撮っています。クソでかい上に重い鞄を背負って行った意味が全くありません。ちくしょう。
実際外で振り回してみると、中望遠のコンデジというものは超楽しい。最高です。かつて一眼の単焦点デビューに購入し、画角が合わずに手放してしまったあの時の50単と同じ画角であることが俄に信じがたい。この超楽しい画角を味わえるコンデジがDP3MerrillとQuattroの2機しか世に存在しないのが信じられません。もっと増えてもいいと思います。
75mmというのは町を徘徊していて少し遠くに見えたいい感じな景色を収めるのに丁度いいのかもしれません。もちろん駄々っ子Foveonちゃんは全然AF早くないので最強のスナップシューターことGRシリーズのようにサッと街の景色を切り取ることはできませんが、K-70+18-35mmF1.8よりは比べ物にならないほど軽快に写真を撮ることができます。
そして見てくださいよこの表現力。京阪宇治駅の近くにある橋で撮った画です。水のあたりとか超キモいですよね。ヤバいですよね。
古都らしからぬ現代的で大スケールの建築が魅力的な京都駅です。駅の中を歩く人達を75mmの画角で俯瞰すると超楽しいです。
そこから少し時は流れて10月に池袋界隈に用事があったのでDP3を持っていきました。池袋から適当にフラフラと歩いていたらいつの間にか雑司が谷方面に抜けていたので都電沿いを歩く方向にシフトします。
夕暮れ時は空の明るさも少し柔らかくなり、ド日中ほど白飛びしやすいわけではありませんが、Foveonはハイライトがすぐ大爆発するので油断できません。
一例に京都のカットを再び出しますが、このカットはハイライトが大爆発したものを現像でどうにかした一例です。参考にRAWを読み込んだまま無編集のストレートの状態も見ていただきましょうか。
これです。京都市に核爆弾が投下された瞬間を収めた貴重な一枚です。
まあこれだけ大爆発していてもここまでリカバリーが効くのですが、雲のあたりをよく見ると薄く緑や赤の偽色が生じている箇所があるのが分かると思います。特に画の左上あたりは顕著ですね。
シャドウの階調はかなり余裕があるので空が爆発する時は躊躇なく露出を下げましょう。暗い分には現像でどうにでもなります。閑話休題。
この時のお散歩カメラはDP3がどの程度のシビアな環境までなら耐えうるのか試すという一面もありました。ということで日が落ちて暗くなり始めようが構わず虐め倒します。
タイミング良く踏切が下りたので電車を入れようと思いましたが、シャッターのタイムラグが思いのほか大きく電車の位置が微妙になってしまいました。精進が足りませんね。
こういった画の中を高速で横切る被写体を収めるとなると俄然シャッターボタンを押すタイミングがかなりシビアになってきます。え?連写?ある訳ないじゃないですかそんなの。
学習院下に辿り着いた頃にはすっかり暗くなってしまいました。ここで撮った写真を最後に「流石にこれ以上暗いと無理だな」と思いカメラをカバンに仕舞いました。
さて、先ほど俺は「シャドウの階調にはかなり余裕があるので露出は躊躇なく下げろ」と言いました。あれは嘘です。
Foveonは受光原理の特殊さ故か、光量が足りないとシャドウ部の色が崩壊します。
先ほどの画像からシャドウをガバっと持ち上げたスクショがこれです。軌道にマゼンタ色、木に緑色の偽色が盛大に生じているのが分かると思います。とても見られたもんじゃありません。つまり、かなり暗いシチュエーションではモノクロにしなければ実用的な画は吐き出してくれません。モノクロ写真はかなりセンスが問われるのでセンスのない俺は困ってしまいます。
そんなピーキーで扱いづらいFoveon機も、なんだかんでで使っていて楽しいのです。写真機としては間違いなくDP3より優秀なK-70やZ6よりもこちらの方が写真を撮っていてワクワクします。それはきっと『不便だから』こその楽しさなのでしょう。オタクの趣味は往々にして行く所まで行くと不便を乗りこなして面白として楽しむフェーズがある物だと思っています。令和の時代にわざわざMTの車に乗るようなものです。
現代の写真オタクが不便を楽しむにはフィルムカメラを嗜むのが圧倒的に主流派ですし、実際に俺もフィルムカメラでも写真を撮っています。ですが、やはりフィルムカメラはランニングコストがかかります。現像まで入れるとフィルム1本に3000円が溶けるのでやはりお財布には優しくありません。不便を楽しむという事自体贅沢な事なのであまりケチケチしたくはありませんが、1本撮るごとに軽くなる財布から目を背ける事はできません。
対してFoveonはデジタルカメラなのでランニングコストはほぼゼロです。しいて言えばバッテリーを充電する電気代ぐらいです。しかし何も考えず適当にシャッターボタンを押すだけでは綺麗な写真を撮らせてはくれません。デジタルカメラでありながらどこかフィルムカメラ的な難しさを秘めているからこそ、その難しさに向き合うのが楽しいのかもしれません。
写真が溜まったらブログに書こうと思ってはや四半期、ここに出した写真以外にも何枚か写真を撮りました。まあ癖が強いカメラではありますが、フィルム機ほど気難しい機体ではありません。jpeg撮って出しの画はゴミカスなのでRAW現像必須ではありますが、RAW現像に親しんでいるオタクであれば撮る上で考える事が少し多くなるだけで思っているほど気難しいカメラでもありませんし、Merrill世代はかなり値段もこなれて来ています。そこのあなたもFoveonワールドへ足を踏み入れてみませんか?