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西町北21丁目

まともな事を書きます

江ノ島電鉄午前5時

4月5日、早朝の江ノ電へ行ってきた。

どっかの江ノ電オタクの写真をTwitterではよく見かけていてそれに影響されたという理由もあるが、サカナクションの「夜の東側」の歌詞みたいな写真が撮りたかったというのが大きい。

さよならする夜の東側

ゆっくり そう ゆっくり暮れる

隣り合わせの明日を待つだけ

そこまで音楽には詳しくないので語らないでおくが、終わる夜を「暮れる」と表現する山口一郎のセンスにはただただ脱帽だ。

 

そんな歌詞のような写真が撮りたい。そう思い立って朝3時起きで江ノ島駅まで自転車を飛ばした。

 

自転車を漕いでいる間に空は藍色になり始め、江ノ島駅に到着する頃には東の空が橙色に染まり始めている。

 

江ノ島駅腰越駅の間にある併用軌道区間へ向かい、道路脇で画面を覗きながらまずは構図を決め、それから肉眼で見える景色の通りに、あわよくばそれ以上に綺麗に映るよう設定を追い込む。

そうして始発電車が江ノ島駅を出る午前5時10分、道路の上にある表示が「電車接近」を表示し始め、道の向こうからゆっくりとカーブを曲がりながら始発電車がやってきた。

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明ける空のグラデーションの下を走る電車の画が画面に表示された時の気分は最高だった。この1枚のためだけに3時起きで自転車を漕いできた甲斐があった。

 

最も撮りたかった1枚は撮れたがこれだけ撮って帰るのもなんなのでとりあえず江ノ島駅へ向かうおうか。

江ノ島駅に到着したらちょうど鎌倉行きが発車して行ってしまった。次の鎌倉行きまで25分近く待ちぼうけ。

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早朝の江ノ島駅は人もまばらで、自分を含めてもホームにいる人数は数えるのが片手で足りるぐらいだ。昼には観光客でごった返すであろう江ノ島駅のこういった一面はなかなか新鮮。

 

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稲村ヶ崎から来た藤沢行きの始発を見送ると、いよいよホームには誰もいなくなった。

鎌倉行きの電車が来るまで「夜の東側」を聞きながら時間を潰すことにしよう。それにしてもいい曲である。一体どんな飯を食っていたらあんな詩とメロディーがひねり出せるのだろうか。音楽家ではないがただただ疑問である。

駅の横にある踏切を通り抜けていく朝ジョギング中の人々を見ながら「こんな時間から元気だなあ」なんて思っていたが、よくよく考えると俺も“こんな時間”から動き回っている人間の一人だった。

 

 そうこうしているうちに25分の待ち時間は過ぎていて、踏切の警報音がなり始めて線路の奥から小さな2両編成の電車が現れる。

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やってきたのは営業運転している中では最古参の305編成。江ノ電の電車と聞いてこの電車を連想する人も少なくないのでは無いだろうか。製造されたのは1960年とのことで、俺の親が生まれるより前からこの路線を走っていることになる。

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板張りの床、バス窓、少し色褪せた緑色の座面、何もかもが一回り二回り前の時代を感じさせる内装。当然のことながらLEDやLCDによる案内表示なんてものは無い。自動放送は付いてるらしいけど

 

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江ノ島〜腰越の併用軌道区間を走り抜け、家と家の間を縫いながら少し走ると、急カーブしながら海岸線へ飛び出る。

目まぐるしく変わる車窓も江ノ電の見所。江ノ島から鎌倉高校前の3駅の間だけでもこれだけ車窓に変化があるのだ。それもあってか、今となっては江ノ電自体が観光地化して昼になると乗客でごった返すが、こんな時間に観光客なぞいる訳もなし、レトロな電車に揺られながらゆっくりと車窓を楽しむことができる。

 

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言わずと知れた「海の見える駅」こと鎌倉高校前駅で305とはお別れ。鎌倉高校前駅自体は何度か来たことはあるが、いつも自転車で来ていたので電車に乗って駅のホームからこの景色を見るのは始めて。

 

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駅のすぐ横にある超有名な「海が見える踏切」もこの時間には人もまばら。俺の他には中国語っぽい言葉を喋っている2人組の外国人が2組いただけである。

 日中はこんな感じで地獄絵図と化しているらしいが、こんな時間にこんなところへ来るような物好きなだけあって皆「分かってる」人たちばかりなので楽に撮影ができる。

 

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「せっかくだし海岸でも行くかw」と軽い気持ちで海岸へ行ったものの、海岸へ降りる階段を降りると眼前にはものすごい景色が広がる。自分の写真で「自分で撮った写真じゃないみたい」なんて思ったのはこれが始めてである。電車撮ってる場合じゃねえ

 

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釣りをする人を遠くに眺めながら波の音を聞く。なんと贅沢な時間の使い方だろうか。そもそもこんな波打ち際で釣りしても何か釣れるんだろうか。

おでかけした先の過ごし方で「何もしない」という時間の使い方は個人的には最も贅沢な時間の使い方だと思っていて、日常の事からおでかけの事まで何もかもを放り出して無になれる時間はそうそう無いものだ。

 

 久しぶりに海へ来て謎テンションになった挙げ句よくわからない写真を撮ったりするなどしながら時間は過ぎて行って、気がつく頃にはいつの間にか夜も完全に明けきっていた。

 

鎌倉高校前駅へ向かって鎌倉行きの電車に乗り込む。世間は平日なのでそろそろ通勤ラッシュが始まるだろうか。

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わりません

 

この後にも昼過ぎぐらいまで江ノ電は撮っていたのだが、このほんの1〜2時間程度の濃密な時間のことを書きたかっただけなのでそこから先は全部カット。昼過ぎになると江ノ電は本当に混雑が凄くて、いっつも通学で使うクソ過疎ってるブルーラインの比では無いぐらい人が乗っていた。

 

目まぐるしく変わる車窓、重連で走る小さな2両編成、レトロな車両や窓の大きな車窓が見やすい車両等々…江ノ電は首都圏のローカル線として面白いものを色々と持っているのだが、路線自体が観光地化し始めてからは日中なんか混雑でそれどころじゃない。

湘南にある小さなローカル線としての江ノ島電鉄を見たい人も早朝に江ノ電へ来るのはオススメだと思う。世の中には「早起きは三文の得」なんて言葉があるが、一度早起きして始発で江ノ電に乗りに来てはいかがだろうか。人でごった返す観光路線とは一味違った江ノ電が見られるぞ。